【クオンツ・コンサルティングOJT担当対談/後編】
新卒コンサルタントはどう育つか
前編では、お二人のキャリアと現在の案件、裁量の変化、新卒OJT担当になった経緯や日々の関わり方に加え、育成方針のルーツやストレッチ課題の与え方について伺いました。後編では、新卒社員が最初に直面する壁とその乗り越え方、心理的安全性の保ち方、成長を実感したエピソード、そして入社を検討している方へのメッセージまで、より深く掘り下げます。
最初の1年間で身につけてほしい基本動作
―最初の1年間は基礎を固める時期と言われますが、基本動作や考え方として重視していることを教えてください。
大釜:ドキュメンテーションなどの個別スキルよりも、「日々のフィードバックを自分なりに言語化し、自らPDCAを回す精度を高めてもらうこと」を一番意識しています。 最初は、指摘に対して「次は頑張ります」「気をつけます」といった、具体性を欠いた精神論の改善策になりがちです。しかし、それでは本当の成長にはつながりません。「なぜそのミスが起きたのか」を自ら深掘りして原因を特定し、どうすれば再発を防げるかを解像度高く考えてもらうことを重視しています。 このPDCAの回し方さえ身につけば、将来どんな案件に配属されても、自分の力で課題を乗り越えていけるはずです。
久保田:私は、「目的意識」と「優先順位付け」の徹底ですね。 ファシリテーションやドキュメンテーションなどあらゆるアウトプットは、「この会議の目的は何か」「そこに時間をかける意味があるか」という目的意識と優先順位の整理によって、質が大きく左右されます。 実はこれ、私自身が若手時代に最も苦労し、身につけるまでに2年ほどかかってしまった苦い経験があるんです(笑)。だからこそ、自分の反省も込めて、最初の段階から「今何をすべきか」「本当に取り組む意味があるか」という思考の軸を徹底的に伝えています。
―具体的には、「このタスクの目的は何だと思う?」と都度確認していく形でしょうか。
久保田: そうですね。ただ、最初は問いかけてもすぐに答えられないので、最初の2〜3週間は「このタスクは、こういう目的のために依頼します」と、こちらから目的をインプットする時間を設けます。 その後、「今この依頼をしているけれど、全体の目的のうちのどこを解決するものだと思う?」と問いかけるステップへ移行し、本人の考えに対してフィードバックしていきます。たとえば、お客様があまり重視しない細かい部分に時間をかけすぎているときは、「そこはこだわらなくていいよ」と引き算の判断を伝えることもありますね。
―新卒時代に戻れるなら、お二人からOJTを受けたいという声が上がりそうですね。
久保田: 今、大釜さんのお話を伺っていて、自分で改善点に気づき、軌道修正していく習慣づけも本当に大切だなと実感しました。ぜひ私の指導にも取り入れたいです。
―お互いのスタンスや案件特性に合わせた「指導方針の違い」を、OJT同士で共有する場はあるのでしょうか。
大釜: 他のOJT担当が書いている「振り返りシート」を拝見して、どのようなアプローチをされているかを参考にすることはよくありますね。
久保田: そこから得る気づきは本当に多いです。「ここまで細かく指導されているんだな」と刺激を受けたり、自分がやや感覚的に伝えてしまっていた部分を、他の担当が分かりやすく丁寧に伝えているのを見て「なるほど、この言い方は真似しよう」と参考にさせていただいています。
新卒社員が最初に直面する壁と、その乗り越え方
―OJT担当のお二人から見て、新卒社員が最初に直面する壁はどのようなところにあるのでしょうか。また、それをどのように乗り越えてもらっていますか。
久保田:「次に何をすればいいか分からない」「何がゴールなのか見えない」というように、頭の中が完全にフリーズしてしまう瞬間ですね。これは新卒の時期には必ずと言っていいほど起こります。 経験がないのだから当然ですよね。なので、まずは私がお客様の前で報告する姿や、会議を回している様子を「デモンストレーション」として見せるようにしています。その上で、私の発言の意図をできる限り丁寧に種明かしし、「次に同じ場面が来たら真似できる」という状態、つまり最初の思考の型を身につけてもらいます。 もちろん自分で考えてもらうことも大切ですが、右も左も分からない段階で「考えてみて」と丸投げすると、硬直して動けなくなってしまいます。まずは動けるだけの最低限のベースを用意してあげることが、指導側の役目だと思っています。
―いわば、最初の「装備」を渡してあげるようなイメージですね。
久保田:まさにその通りです。まずは最低限の武器や知識を持たせて、「自分にも何かしらできる!」という状態を作ること。本人が自分の役割と成長を実感できるよう、段階を踏むことを意識しています。
―自己効力感を失わないようにということですね。大釜さんはいかがですか。
大釜:私は先ほどのお話とも重なるのですが、「自己改善のプロセスを自力で回すこと」が、新卒社員だけでなく中途の未経験メンバーにとっても最初の大きな壁だと感じています。 本人は「原因を分析して、改善策を考えたつもり」になっていても、実際には行動がズレていてなかなか改善されない……というギャップに、多くの人が苦しみます。
―そこはひたすら指摘を重ねていく形になるのでしょうか。
大釜:指摘して答えを与えるというよりは、「問いかけ」を通じて内省を深めてもらう形ですね。 今のOJTでは、日次の振り返りシートに「できなかったこと」と「改善策」を具体的に書いてもらう仕組みがあります。これをもとに面談をしながら、「本当にこれが根本的な原因かな?」「これをやれば本当に改善すると思う?」「明日からすぐ実行できそう?」と、本人が『あ、そうか』と気づくまで対話を繰り返していきます。
心理的安全性をどのように保つか
―OJTを通じて新卒社員との信頼関係を築き、困った際に相談してもらえる関係性を作ることも重要だと思いますが、心理的安全性を保つために意識されていることはありますか。
大釜:業務中は率直にフィードバックをすることが多いため、毎日一緒に昼食をとって仕事以外の話をしたり、一緒に休憩を取ったり、退勤時間が重なれば駅まで一緒に帰りながら話したりと、業務以外の場でコミュニケーションの機会を積極的に設けることを意識しています。
久保田:私もいくつか意識していることがあります。
1つ目は、何を話しても良いと感じてもらうことです。発言があった際にはまず肯定した上で、「こうしていくとより良いのでは」という形で提案するようにし、何でも話して良いという姿勢を示しています。
2つ目は、私自身も完璧ではないという一面を見せることです。プライベートの話をしたり、うまくいかない部分も率直に共有したりしています。
3つ目は、1日に1回は場を和ませることを心がけている点です。
成長を実感したエピソード
―OJTが始まって1か月半ほど経過しましたが、新卒社員が特に成長したなと感じたエピソードはありますか。
大釜:正直、成長のスピードには日々驚かされています。プロジェクトに参画した当初は、会議の議事録を作成するのも一苦労という状態でした。しかし、何が不足しているのかを一つひとつ言語化してフィードバックしたところ、彼はそれらを着実に吸収していき、結果として、わずか数週間で私が軽く手を入れるだけでお客様へそのまま提出できるレベルの議事録を作れるようになりました。私自身の新卒時代と比べても、信じられないほどのスピード感ですね。
久保田:私は、普段から口酸っぱく伝えている「目的意識」が、しっかり本人の血肉になってきたなと感じています。以前、報告のステップについて「細かい話から入るのではなく、①何の目的のタスクで、②今はどんな状況で、③何を相談したいのか、を最初に伝えてね」と口頭でアドバイスしたところ、その直後からチャットでの報告も、マネージャーへの報告も見違えるほど分かりやすく改善されました。OJT期間を通じてゆっくり身につけてもらおうと思っていたことだったので、一度の指摘でここまで変わるのかと驚きました。
また、逆に私が助けられた場面もありました。 お客様からのある質問に対し、私がリサーチのソースをパッと思い出せず、一瞬言葉に詰まってしまったことがありました。その時、すかさず「その件でしたら、こちらの情報ソースから確認済みです」と横から完璧にフォローしてくれたんです。事前に「質問が来るかもしれないから準備しておいてね」とは伝えていたものの、まさかあそこまで臨機応変に対応してくれるとは思わず、本当に頼もしかったですね。
教える立場としての難しさと、自身の成長
―逆に、教える立場として難しさを感じる部分はありますか。
久保田:どこまで自分が介入すべきかという見極めです。明らかに行き詰まっている場合には声をかけますが、難しいだろうと思っていたことが意外にもスムーズにできてしまうこともあります。悩み続けた末に自力で解決できるかどうかの見極めや、どこまで手を差し伸べるかの判断が、担当業務が高度になるにつれて難しくなっていると感じています。彼女自身も自分で設計できるようになってきており、成長のスピードが見えにくくなる中で、どこまで関与すべきか悩むことがあります。
大釜:人によって、もともとの思考力やフィードバックへの耐性が大きく異なるため、率直に伝えた方が良い方もいれば、そうでない方もいます。相手のフィードバックへの受け止め方や反応を見極めながら、伝え方の強弱をつけることの難しさを感じています。
―育成という観点で、ご自身が得ている学びや成長を感じる部分はありますか。
大釜:改善プロセスを身につけてもらうという話をしましたが、これまでサポートやOJTを通じて多くの方と関わる中で、案件を通じて大きく成長する方とそうでない方の違いについて考えるようになりました。フィードバックに対してどれだけ深く原因を考えられるか、次のアクションをどれだけ解像度高く考えられるかが重要であると気づき、意識的に見るようになりました。さまざまな方とご一緒させていただいたからこそ得られた気づきだと感じています。
久保田:これまで私自身が感覚的に進めていた業務を、人に教えられる水準まで言語化する必要に迫られ、成長させていただいたと感じています。私の業務のルールを言語化することや、無駄な作業を発生させないようゴールを見据えて設計することなど、ゴールを起点とした思考力が改めて磨かれた部分があると感じています。
以前、上司から「あなたが担当するタスクは無駄にはさせないので安心してほしい」と言っていただいたことが嬉しかった記憶があり、その姿勢を私自身も新卒社員に伝えていきたいと考えています。
一人にしないための、バックアップ体制
―新卒社員が困った際に頼れる環境づくりや、チーム内での役割分担について意識されていることはありますか。
大釜:週に1回、案件のマネージャーに同席していただき、1週間を振り返る時間を設けています。マネージャーは前向きに評価してくださるタイプで、新卒社員の成長をポジティブに評価してくださるため、指導のバランスが取れていると感じています。
久保田:直接指導しているのは主に私ですが、マネージャーを交えたミーティングも毎日実施しており、私を介さずに上位者2名といつでも会話できる状態を作っています。私が対応しきれない技術的に細かい相談については、直接やり取りしていただくこともあります。私以外にも相談できる環境を用意した上で、チーム全体で状況の共有や認識合わせを行っています。
また、誰か一人は必ず味方になることを意識しています。たとえば、私と新卒社員で事前にすり合わせた内容について、社内の上位者から指摘が入った場合でも、最後まで私がその内容を支持しますし、逆に上位者からの指示で対応した内容について私から指摘を受けた場合でも、途中で梯子を外すようなことはしないよう意識しています。
これからクオンツを目指す方へ
―成長する新入社員に共通する点はどのようなところにあると思いますか。
久保田:知らないことを楽しめる方だと思います。「知らない、分からない、苦手だ」と捉えるのではなく、「これは何だろう」というところから理解していくプロセスを楽しめることが、素養として大きいと感じています。専門性の高いテーマに取り組む機会も多いため、「できない」を理由にするのではなく、これまでの経験や知識にとらわれず、前向きに取り組めるかどうかが重要だと思います。
大釜:目的意識と素直さです。指摘をそのまま受け止めるのではなく、「なぜこの指摘を受けたのか」と一段高い視点で捉えられる方は、成長につながると思います。最初は多くのフィードバックを受ける期間が続きますが、そこで前向きさを失わず、一つひとつ着実に改善していく素直さを持つ方が、最終的には大きく成長すると感じています。
―入社を検討されている方、特にベンチャーファームへの入社に不安を感じている新卒の方へ、OJT担当の立場から伝えたいメッセージをお願いします。
大釜:ベンチャーファームであることに不安を感じる方もいらっしゃると思いますが、教育体制については、自身の経験を活かして設計しているため、質の面でも遜色ないと考えています。また、社員全員が新卒社員を大切にしており、将来的に会社を担う存在になってほしいという思いから、積極的に関わってくれる環境があります。成長初期のスピードは、どれだけ目をかけてもらいフィードバックを受けられるかに左右される部分が大きいため、その意味でも良い環境だと感じています。
久保田:大手ファームにはない魅力として、早期に成長したいという意欲を持って検討されている方も多いと思いますが、その教育体制は確実に整っています。さまざまなテーマ、さまざまな経歴を持つメンバーがワンチームとなり、部署の垣根を越えて適材適所でプロジェクトが組成されます。その中で幅広い案件を経験できますし、入社2か月でお客様の前に立たせていただけるのは、大手ファームにはないスピード感だと思います。
編集後記
お二人の話には共通して「自分が受けてきた教育を振り返り、良いところは引き継ぎ、嫌だったことは繰り返さない」という一貫した姿勢がありました。目的意識を徹底させる指導、日次の振り返りを通じたPDCAの精度向上などアプローチは異なっていても、根底には「自分の頭で考えさせる」「一人にしない」という共通の哲学が流れているように感じます。また、教える立場になったことで、自分自身の仕事の進め方を言語化し、改めて見つめ直す機会になったという二人の言葉も印象的でした。育成する側もまた、育成を通じて成長している。その循環こそが、クオンツ・コンサルティングの新卒育成のリアルなのだと思います。
